90番のための写真講座

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2012/08/21 更新(まだ書きかけです)

基礎編 第1回: 焦点距離と画角

カメラのレンズは1本の中にたくさんのレンズを組み合わせてある非常に複雑なものですが、
おおざっぱには形や場所を変えられる1枚の凸レンズだと思うことが出来ます。

凸レンズなのでレンズに平行に入ってきた光は折れ曲がり、ある1点に集まります。この点を焦点といい、レンズの中心から焦点までの距離を焦点距離と呼びます。

焦点距離はそのレンズによって写せる角度(画角)に関係します。

下図のように、焦点距離が短い(広角)だと広い範囲を写せますし、焦点距離が長い(望遠)だと写せる範囲が狭くなります。

広角は画角が広く、望遠は狭いので、同じ距離にある同じ大きさの物体は望遠の方が大きく写ります。逆に、同じ物を同じ大きさで撮りたい場合は広角なら近く、望遠なら遠くに置く必要があります。

また、広角だと90番や木の手前と奧で既に写る範囲が大きく違うので、写される像が歪みます(望遠でも僅かには歪みますが殆ど目立ちません)。しかしこれはデメリットではなく、むしろ広角で撮る時には積極的に利用したい性質です。

凸レンズの焦点距離は一定で変更することは出来ませんが、カメラのレンズは焦点距離をある程度自由に変えるが出来ます(ズーム)。ズームが出来るレンズをそのままズームレンズ、普通の凸レンズのように焦点距離を変更できないレンズを単焦点レンズと呼びます。単焦点レンズはズームできない代わりに画質や大きさ、重さの面で有利です。

実際どのように写るか見てみましょう。90番とカメラは全部同じ位置(約4m先)に置いて、焦点距離だけを変えています。

16mm35mm50mm85mm
135mm200mm400mm1080mm

次に、90番が同じくらい大きさに写るように距離を変えながら撮ってみます。90番と背景の灯籠の距離は同じです。

16mm50mm105mm200mm

このときは90番と背景の大きさ比が変わってきます。また、広角では遠近感が強調され、望遠では背景と90番がすぐ近くにあるように見えます。また、16mmの写真では90番が大きく歪んでいるのが分かると思います。本来焦点距離(画角)の調整はこのように被写体と背景の大きさ比や遠近感の調整に使うべきもので、写す大きさを変えるためのものではありません(大きさは距離で調整します)。

しかし、90番写真では90番を自由に配置することは難しいことが多いですし、後述のピントの問題から広角をメインに使うことが多くなります。

ちなみに焦点距離と画角そのものはイコールではありません。図のように、カメラのセンサー(フィルム)のサイズが異なれば、同じ焦点距離でも写せる画角が変わります。センサーサイズが小さければ小さいほど同じ焦点距離だと画角が狭く(望遠に)なります。

このように焦点距離が一定でもセンサーサイズによって画角が変わってしまうため、本来は画角は角度そのもので表示するべきなのですが、慣習で35mmフィルム(フルサイズセンサー)で撮ったときに相当する焦点距離で画角を表す事になっています。これを35mm換算焦点距離などと呼びます。

例えばAPS-Cサイズのセンサー(一般的な一眼レフのサイズ)で焦点距離50mmのレンズで撮影すると、フルサイズセンサーで75mmのレンズで撮ったときと同じ画角で写せます。このときは焦点距離50mm(換算75mm)などと表します(上のサンプルは1080mm以外はフルサイズ一眼レフで撮っているので実焦点距離=換算焦点距離です。1080mmは2.7倍で実焦点距離400mm、換算焦点距離1080mmになっています)。

以下に代表的なセンサーサイズと換算焦点距離の倍率を載せておきましょう。

センサーサイズセンサーの大きさ換算焦点距離の倍率
フルサイズ36mmx24mmx135mmフィルム相当
ハイエンドデジタル一眼レフ
APS-C23.6mmx15.6mmx1.5一般的なデジタル一眼レフ
ソニー NEXシリーズ
APS-C(Canon)22.3mmx14.9mmx1.6キヤノンのデジタル一眼レフ
キヤノン EOS Mシリーズ??
フォーサーズ17.3mmx13mmx2
Nikon 113.2mmx8.8mmx2.7
1/1.8inch6.9mmx5.2mmx5ハイエンドコンデジ
1/2.3inch6.2mmx4.6mmx5.5一般的なコンデジ
1/3.2inch4.6mmx3.5mmx7.4携帯、スマフォなど

おおざっぱに、35mm換算焦点距離で〜35mmが広角、35〜50mmが標準域(特に換算焦点距離50mmのレンズを標準レンズと呼ぶことがあります)、50mm〜85mmを中望遠、85〜200mmを望遠、200mm〜を超望遠などと呼んだりしますが、この辺の呼び方や感じ方は人それぞれで特に決まりがあるわけではありません。ちなみに人間の目の視野角はぼーっと見渡しているときは35mm相当、しっかり見ているときは50mm相当程度といわれています。

ちなみに、コンパクトデジカメでよく見られるズーム○倍という表示は、ズームできる最長の焦点距離と最短の焦点距離の比であって、実際にどの程度大きく写せるのかや画角そのものとは一切関係ありません。極端な話5mm〜20mmでも、100mm〜400mmでも同じ4倍ズームです。デジカメを選択するときはズーム比だけではなく仕様を見て35mm換算で何mm〜何mmなのかを確認することを忘れないようにしましょう。



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