90番のための写真講座

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2012/08/21 更新(まだ書きかけです)

基礎編 第3回: ぶれとシャッタースピード

写真を写すには映像素子やフィルムに光を当てなければなりません。当たった光の分だけ画像が写ることになり、必要なくなったら当たらないように遮らなければなりません。映像素子やフィルムに光を当てたり遮ったりするための仕組みがシャッターです。

シャッターが開いて光が映像素子に当たっている時間をシャッタースピードといいます。

シャッタースピードは2のべき乗分の1秒が区切りの良い数値とされています。本来は1秒、1/2秒、1/4秒、1/8秒、1/16秒、1/32秒、1/64秒、1/128秒、1/256秒、1/512秒、1/1024秒、1/2048秒、1/4096秒、1/8192秒…なのですが、何故か慣習で1、1/2、1/4、1/8、1/15、1/30、1/60、1/120、1/250、1/500、1/1000、1/2000、1/4000、1/8000と呼び、その逆数(1、2、4、8、15、30、60…)で表示します。カメラ上でシャッタースピードが60と表示されていた場合はシャッタースピード1/60と読み、実際は1/64秒シャッターが開きます。

シャッタースピードはもちろん1秒以上になることもあります。この場合そのまま秒数で表します。シャッタースピード1/2秒と2秒などは紛らわしいので、2秒の場合はちゃんと秒と書くか、2"などと書きます。



さて、シャッターが開いている間の景色はみんな写真に写り続けてしまいます。つまり、シャッタースピードが遅くなると動いているものが動き続けて写ってしまうことになります。これがぶれです。

ぶれには写す対象が動いてしまうことによる被写体ぶれとカメラが動いて相対的に全ての被写体がぶれてしまう手ぶれがあります。このぶれはシャッタースピードが遅くなればなるほど、被写体の動きが速くなればなるほど目立つようになります。
手ぶれ

手ぶれが失敗ではない局面は極めて希ですが、被写体ぶれは一概には失敗とはいえません。例えば水の流れなどは敢えてシャッタースピードを遅くして撮って流れを表現したりしますし、一般的に被写体ぶれをうまく使うと動きを表現することが出来ます。シャッタースピードと被写体ぶれの様子を載せておきます(機関車は全部同じ速度で動いています)。

SS1/2(1/2秒)SS1/10(約1/10秒)SS1/30(1/32秒)
SS1/60(1/64秒)SS1/125(1/128秒)SS1/250(1/256秒)

しかし、やはり意図しない被写体ぶれは失敗ですし、起こさないに越したことはありません。つまり、シャッタースピードは基本的には速ければ速いほど有利です。

ちなみにシャッタースピードを利用した特殊なテクニックとして, 極端に長いシャッタースピードで動いているものを消す長時間露光(左, 機関車のヘッドライトや客車の屋根といった明るい部分の軌跡だけが写っています), 遅めのシャッタースピードで動いているものに合わせてカメラを動かして背景の方をぶらして動きを表現する流し撮り(右)などがあります。どちらも90番写真で使う機会はあまりないでしょうけれど(^^;;;)

長時間露光(SS1分)流し撮り(SS1/15)


絞りが写真のぼけ具合をコントロールするように、シャッタースピードは写真の躍動感をコントロールします。また、もちろん被写体の動きが速ければ速いほどぶれますし、同じ速さなら画角が狭い(=焦点距離が長い)ほど、被写体が近いほどぶれが大きくなります。

例えば時速60kmで走っている車をシャッタースピード1/60で撮るとシャッターが開いている間に(60km/60分/60秒/64で)約26cmほど進みますが、目の前で26cm進むと場所は大きくずれますが、100m先で25cm進んでも殆ど止まっているように見えるでしょう。


特に手ぶれを防ぐには、シャッタースピードを速く、画角を広く(=焦点距離を短く)が基本です(もちろん正しい撮影姿勢と腕前の向上も)。昔から1/(35mm換算焦点距離)が手ぶれしないシャッタースピードの下限と言われています。焦点距離30mmならシャッタースピード1/30、焦点距離200mmならシャッタースピード1/200という具合です。カメラの映像素子がAPS-Cサイズなら35mm換算焦点距離は実焦点距離の1.5倍になるので、焦点距離50mm(=換算75mm)ならシャッタースピード1/75が適正です。

ちなみに撮るのが上手ければ上記の2倍〜4倍くらいは手ぶれせずに撮れますし、下手だったり無茶な体勢で撮らなければならないときはもう少し余裕を見たほうがいいです。

カメラやレンズに手ぶれ補正機能があればその分手ぶれしにくくなります。例えば手ぶれ補正3段分、という場合は1段で2倍なので、2x2x2=8倍のシャッタースピードまで大丈夫ということになります。焦点距離200mmならシャッタースピード1/25まで大丈夫ということです。しかしもちろんどんなときでも3段分大丈夫なわけではないですし、手ぶれ補正機能があっても油断は禁物です。

もちろん手ぶれ補正機能では被写体ぶれは防げません。被写体ぶれを防ぎたかったらシャッタースピードを上げる以外に方法はありません。



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