明るいところに置いた90番と、暗いところに置いた90番。写真に写したときどちらが明るく写るでしょうか。
答えは実はどちらとも言えないです。
写真がどのくらい明るく写るかは、映像素子にどれだけ光が当たったかによって決まります。周りが暗くても長時間光を当てていれば明るく写りますし、周りが明るくても短時間しか光を当てていなければ暗くなります。つまりシャッタースピードが速ければ速いほど写真は暗くなります。
映像素子に当たる光の量を調整するのはシャッタースピードだけではありません。絞りを絞るとレンズの大きさが変わります。つまりレンズを通過する光るの量が減り、そのまま映像素子に当たる光も減ります。このとき絞りが1段上がる(絞り値が2の平方根倍になる)と、映像素子に当たる光は半分になります。
つまり、絞りを1段開けてシャッタースピードを2倍にする、絞りを1段開けてシャッタースピードを半分にする、などしても写真の明るさが変わりません。以下に絞りF8、シャッタースピード1/30で丁度良い明るさになるになる状況で絞りとシャッタースピードを変えて撮った写真を並べてみます。
絞り\SS | SS1/8 | SS1/30 | SS1/125 |
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F4 | ![]() | ![]() | ![]() |
F8 | ![]() | ![]() | ![]() |
F16 | ![]() | ![]() | ![]() |
右上から左下への対角線に並んだ写真がだいたい同じ明るさになっているのが分かるでしょうか。一番左上は明るすぎて白飛び、右下は暗すぎて黒つぶれしています。
逆に、照明を点けたり消したりして周囲の明るさを変えて撮ったのが次の写真です。光の当たり方が変わっていますが、画面全体としてはほぼ同じ明るさになっています。
照明明るい | 照明暗い |
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![]() | ![]() |
F5.6 SS1/80 | F5.6 SS1/5 |
写真の明るさを露出といいます。丁度良い露出のことを適正露光といいますが、もちろん撮影意図によってどのくらいの明るさが適切かは異なります。
露出は相対的に段という言葉で比較します。当たる光の量が2倍になることを+1段、1/2になることを-1段といいます。同じ絞り値ならシャッタースピードが2倍になると-1段、1/2になると+1段で、同じシャッタースピードなら絞り値が1.4倍(正確には2の平方根倍)になるごとに+1段、1/1.4倍になるごとに-1段です。上記の表だと縦横に1マスずれるごとに±2段されています。
さて、絞りは前節の通りぼけの量に関係あり、シャッタースピードはぶれの量に関係があるので、露出のためだけに決めることが出来ません。ぼけ、ぶれ、露出のバランスをとりつつシャッタースピードと絞り値を決めるのが写真撮影技術の半分(もう半分は構図)です。
ところで、最近のデジカメには映像素子の感度を変えることによりシャッタースピードや絞りと無関係に露出を変えることが出来る機能があります。この映像素子の感度のことをISO感度といいます(フィルム時代にも感度の違うフィルムに入れ変えることにより多少の調節が出来ました)。
ISO感度も数字で表され、2倍になると2倍の明るさ(+1段)で写ります。だいたい100、200、400、800、1600…と2のべき乗の100倍の値がよく用いられます。次の5枚は全て同じ絞り値、シャッタースピード(F5.6, SS1/60)でISO感度だけ変えています。
![]() | ![]() | ![]() |
ISO200 | ISO400 | ISO800(適正) |
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![]() | ![]() | |
ISO1600 | ISO3200 |
しかし、ISO感度は映像素子から出力される電気信号を無理やり増幅させて調整しているので、その際にノイズも一緒に増幅してしまうため、ISO感度を大きくしてしまうと画質が大きく劣化していきます。
ISO感度をどれくらい大きくしても大丈夫かはカメラや被写体、見る人によって異なってきますが、基本的には映像素子が大きいほど、機種が最新になるほどISO感度を高くしても平気になります。
つまり、ISO感度を調整できるデジカメでは次の表に応じて適切な絞り、シャッタースピード、ISO感度を選択していくという作業を行うことになります。
露出 | ぼけ量 | ぶれ量 | 画質 | |
---|---|---|---|---|
絞りを開ける | + | + | ||
シャッタースピードを上げる | − | − | ||
ISO感度を上げる | + | − |
露出が明るすぎるときはNDフィルターという写りを暗くするだけのフィルターをつけることによって対応できるので、普通は暗すぎるときにどう設定するか頭を悩ますことになります。
と、いろいろ書きましたが、最近のデジカメはこの辺はみんなフルオートで、カメラが自動的に適切な明るさになるように調整してくれます。これを自動露出といいます。
自動露出にはプログラム(P)、絞り優先オート(A, Av)、シャッタースピード優先オート(S, Tv)があり、それぞれ絞りもシャッタースピードも自動、絞りは指定してそれに合わせてシャッタースピードを自動的に決める、シャッタースピードを指定して絞りは自動的に決めるモードです。これに絞りもシャッタースピードも手動で決めるマニュアル露出(M)を加えた4つのモードが基本です。
廉価な一眼レフやコンデジにはおまかせモードなどがついていることがありますが、これはプログラムモードの一種で、例えばスポーツモードならシャッタースピードを速めにしてぶれを防ぎ、風景モードでは絞りを絞ってぼけないようにするなどカメラ内部で設定しています。
最近の殆どのデジカメは、さらにISO感度も自動調整する機能がついています。これを用いると、マニュアル露出で絞り値とシャッタースピードを両方手動設定してもカメラが自動的にISO感度を調整して可能な範囲で適正露光にしてくれます。
上述の通り同じ露出を得るシャッタースピードと絞り値の組合せは1通りではありません。また、ISO感度の変更も考慮に入れると可能な設定値は多岐にわたります。そのためカメラ任せの自動露出は万能ではなく、ある程度は知識を持って自分で撮影意図をカメラに伝える必要があります。
では、カメラに任せて撮るとどの程度の明るさで撮れるかというと、カメラはだいたい同じ明るさで写そうとします。従って、雪景色でも夜景でも同じ明るさで写ってしまうことになります。
このカメラが自動で写そうとする明るさを指定するのが露光補正です。基本的には明るく、白く写したいときは露光補正をプラスに、暗く、黒く写したいときは露光補正をマイナスにします。露光補正はフルオートで撮るときでも必ず意識しなければなりません。本格的なカメラだけでなくコンデジや携帯で撮るときも必要です。
次の写真は背景が黒い所、白い所でそれぞれ絞り優先オートで絞りをF5.6にして撮っています。カメラは写真全体の明るさが一定になるように調整しているので、黒い背景は明るく、白い背景は暗めになって、その分90番はそれぞれ明るすぎ、暗すぎになっています。
背景が黒い場所 | ![]() | → 露光補正-2Ev → | ![]() |
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F5.6 SS1/15 | F5.6 SS1/60 | ||
背景が白い場所 | ![]() | → 露光補正+1Ev → | ![]() |
F5.6 SS1/250 | F5.6 SS1/125 |
本来の撮影意図に近づけるため、上は露光補正を-2Ev、下は+1Evかけてみました(+1Ev=+1段=明るさ2倍。絞り優先オートなのでカメラは明るさをシャッタースピードで調整しました)。色とライティングが違いますがこれで90番はだいたい同じ明るさになっています。背景は上は黒く、下は白い感じがよりはっきり出るようになりました。
もちろんマニュアル露出モードで撮っている時は露光補正をいくらかけても写る写真は全く変化しません(ただしマニュアル露出時にはインディケーターなどで適正露光に対してどの程度明るい/暗いか教えてくれる機種の場合、その基準値を変更するという意味はあります)。
ちなみにある程度カメラに慣れてきた人は露出モードはだいたい絞り優先オートとマニュアル露出のみしか使わなくなります。これには次のような理由があります。